成功の先に…


昨日の夜、色々と盛り上がりすぎた。

 

 

そして次の日の朝…


見事な寝坊をした。

 

 

 


さあ。大和タケル、どうする?
5分で支度をすませれば、
雇われ現場までどうにか間に合う。

 

 

 


走るか?
しれっと嘘をついて遅刻をするか?
寧ろ休んで旅行にいくか?

 

 

 


寝ぼけた頭を一気にフル回転させ、
出た結論…
それは、さっさと走れ。である。

 

 

 


必要最低限の身支度をすませ、
ダッシュで外に出る。

 

 

 


そして…

 

 

 


いつもとは違うルートで
魔の通勤電車へ滑り込みで入り込む。

 

 

 


シャツはぐっしょりと濡れ、
額から滝のような汗が流れていた。

 

 

 


俺はやったのだ。

 

 

 


腕時計を見てほくそ笑む。


大和タケルは、やったのだ。

 

 

 


いつもの通勤時間に間に合わせる事ができた。

滑り込みに成功したのだ…と。

してやったのだと更にほくそ笑む。

にやにやがとまらない。

 

 

 

 

 


この流れるような汗は…

栄光の汗なのだ!

小さな成功に喜びを噛み締めていた。

 

 

 

 

 


ただ、あまりに疲れた。
と満員電車で前屈みになる。
そして自身のスラックスをみて気づく…

 

 

 

 

 


社会の窓が全開だということに。

 

 

 

 

 

 


…そして気づいた。

 

 

 

 

 

 


周りの視線がやけに刺さるということに…

 

 

 


気づくと周りはスカートの女性ばかりだ。

 

 

 

 

 

 


そして…
ひとりの女性が怪訝そうな顔で
声を掛けてきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


あの…ここ、女性専用車両なんですけど?
わかってます?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


大和タケルはこの日浴びた
女性たちからの冷ややかな視線を
死ぬまで忘れることはないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


また、こんな汗だくで
イヤラシイ笑みを浮かべていた男に対して
声を掛けてきた彼女には敬意を表したい。

 

 

 

 


側から見れば、
どう考えてもスカートを眺めながらニヤける
鬼畜変態野郎としか思えない姿だった。
そんな危険人物に対して
彼女は勇気を振り絞り、声を掛けてきたのだ。

 

 

 


彼女は英雄だ。
その勇気は誰にでもあるものではない。

 

 

 

 

 


これから暫くの間、
彼女はこう呼ばれるだろう…

 

 

 

 

 


山手線のジャンヌダルク…と。

 

 

 

 

 

 

 

成功の先には…

社会の窓がこれ見よがしに開け放たれていた。

 

 

 

 

 


とりあえず、社会の窓はしめようっと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


それじゃ